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「鬼倉ちふのはきさまかと云ふんだよ。あんまり、この近所の者をいためてもらひますまい」
「そんなこと位は造作もない。おれにとつては小指の先の芸当だ」
「あ、さう云へば」
「あん」
それが堂本だつた。
房一は患者の前にもどつて来た。
が、登り切つた所で、ふりかへつて盛子を待つた。そして、何となく様子のちがつたゆつくりさで登つて来る盛子の、上うは目になつた、意味ありげに笑つている顔を見た。
恐らく、房一も他の場合にはこれと似たりよつたりの動作をやるにちがひない、たゞ道平に向ふとこんなに易々とできないのだ。
傷は三箇所を縫つた。
房一の態度が穏かだつたので、相手はいくらか落ちついた。
「さあ、どうぞ。ずつとお通り下さい」
正文はその傍に近づきながら、他の用事で来たついでのやうに云つた。
道平は納得したやうにうなづいたが、又ゆつくり身体を坐りなほすのと一緒に、